
セラピストとして3年ほど、たくさんの身体に触れてきました。
その中で、何度も感じてきたことがあります。
それは、
「自分がどれだけストレスを抱えているのか、自覚していない人がとても多い」
ということです。
施術を受けに来られる方の中には、
「特にストレスはないです」
と話していたのに、身体に触れてみると、肩や首、背中、呼吸などに強い緊張が見られることがあります。
もちろん、身体の緊張がすべてストレスによるものとは限りません。
それでも、
「こんなに頑張っていたんですね」
と身体に触れることで、初めて自分の状態に気づく方は少なくありません。
では、一体なぜ私たちは、ストレスが溜まっていることに気づけなくなるのでしょうか。
今日は、そこについて身体の視点からお話ししていきます。
ストレスがどんどん溜まっていく現代社会
現代社会を生きているだけでも、私たちはさまざまなストレスにさらされています。
そのストレスは、必ずしも「ものすごく嫌な出来事」としてやってくるわけではありません。
むしろ、小さなストレスが毎日の生活の中に当たり前のように存在しています。
人間関係
性格が合わない上司。
職場での気を遣う人間関係。
接客中に出会う嫌なお客様。
できれば話したくない取引先。
家族やパートナーとの関係。
一つひとつは小さなことでも、
「ちょっと嫌だな」
「本当はこうしたくないな」
という感情を飲み込み続けていると、それだけでも身体には負担がかかります。
長時間労働
朝早く起きて仕事の準備をしながら家事をする。
仕事が始まれば、ゆっくり休憩を取る余裕もない。
定時に帰れたらラッキー。
帰宅してからも家事や育児が待っている。
気づけば、一日のほとんどを「やらなければならないこと」に使っている。
そんな生活が続けば、身体も心も休む時間が少なくなってしまいます。
頭がしたいことと、心がしたいことの不一致
社会のレールに沿って生きる。
家族が望んでいる道を進む。
安定した仕事に就く。
安定した収入を得る。
もちろん、それ自体が悪いわけではありません。
ただ、
「本当は何がしたいんだろう?」
という心の声を置き去りにしたまま生き続けると、頭では納得していても、心との間に少しずつズレが生まれていきます。
その小さなズレが積み重なることも、ストレスの一つになるのではないでしょうか。
余裕のなさ
予定を詰め込みすぎている。
何も予定がない時間がない。
ぼーっとする時間がない。
「今日はなんとなくこっちに行ってみよう」
と、感覚に任せて過ごす日もない。
常に時計を見て、
「次はこれをしなきゃ」
と頭の中で予定を追い続けている。
そんな状態では、自分の身体が何を感じているのかに気づく余裕もなくなってしまいます。
そして、ここに一つ大きなポイントがあります。
ストレスは、必ずしも強烈な出来事としてやってくるわけではありません。
小さな違和感が積み重なっていくこともあります。
では、なぜ私たちは、その小さなストレスに気づけなくなるのでしょうか。
ストレスに気づけない理由
ここまで読んで、
「確かに、現代社会にはストレスが多いな」
と感じた方もいるかもしれません。
では、これほどストレスの要因があるにもかかわらず、なぜ私たちはそれを「ストレス」として認識できないのでしょうか。
その一つに、人間の適応能力が関係していると考えています。

たとえば、真っ暗な部屋にいるとき、突然照明をつけたら、
「まぶしい!」
と感じますよね。
ところが、すでに明るい部屋にいる状態で、さらに少しだけ照明を明るくしても、それほど大きな変化には感じません。
私たちの感覚は、今いる環境に少しずつ慣れていきます。
そして、この「慣れる」という能力は、ストレスに対しても起こり得ます。
最初は、
「この仕事、ちょっと大変だな」
と感じていた。
でも、しばらくすると慣れてきた。
さらに仕事が増えた。
最初は疲れていたけれど、それにも慣れてしまった。
睡眠時間が少し減った。
それにも慣れてしまった。
人間関係で嫌なことがあった。
でも、
「まあ、こんなものだよね」
と流すようになった。
こうして、少しずつ負荷が増えていきます。
一つひとつの変化が小さいからこそ、私たちはその変化を「大きなストレス」として認識しにくいのです。
気づかないうちに「普通」が変わっていく

たとえば、最初は肩が少し凝っているだけだった。
でも、それが何週間も続く。
すると、「肩が凝っているのが普通」になってしまう。
呼吸が浅くなっても、「自分は昔からこういう呼吸だから」と思う。
朝起きても疲れていても、「仕事をしているんだから仕方ない」と思う。
眠りが浅くても、「忙しいからしょうがない」と思う。
本当は以前とは違う状態なのに、
今の状態が「普通」になってしまう。
これが、ストレスに気づきにくくなる一つの理由なのではないかと、私は感じています。
そして、身体が緊張している状態が長く続くと、自分の身体の微細な感覚を感じ取りにくくなることもあります。
つまり、
ストレスが増える
↓
身体が緊張する
↓
感覚に気づきにくくなる
↓
さらにストレスが増える
↓
また身体が緊張する
という循環が起こることがあります。
「感じない」は、身体を守るためだったのかもしれない
ここは、とても大切なところだと思っています。
ストレスを感じにくくなることを、単純に「悪いこと」と捉える必要はありません。
むしろ、それは自分を守るための適応として働いている側面もあるのではないでしょうか。
たとえば、何かに集中しているとき。
狩猟をしていた人が獲物を追っているときや、危険な状況から逃げなければならないとき。
足に小さな傷ができた。
枝に身体が当たった。
石を踏んだ。
そんな一つひとつの刺激をすべて意識していたら、目の前の行動に集中できません。
目の前の目的を達成するために、一時的に身体の感覚を後ろに置いておく。
そうした能力は、生きるうえで役立ってきたのかもしれません。
ただし、
本来は一時的だったはずの緊張状態が、現代では長期間続いてしまうことがあります。
ここに、現代社会ならではの難しさがあるのではないでしょうか。
ストレスが溜まり続けると、身体は何を伝えてくれるのか
ストレスが続くと、睡眠、食欲、消化、呼吸、筋肉の緊張など、身体のさまざまな部分に影響が出ることがあります。
最初は小さなサインかもしれません。
「最近、眠りが浅いな」
「朝起きても疲れているな」
「呼吸が浅い気がする」
「肩がずっと重い」
「なんとなく胃腸の調子が悪い」
「以前よりイライラする」
そんな小さな変化です。
しかし、私たちは忙しいと、そのサインを無視してしまいます。
「まだ大丈夫」
「これくらい普通」
「みんな頑張っている」
「仕事だから仕方ない」
そうやって、さらに頑張る。
すると身体は、別の形でサインを出してくることがあります。
もちろん、病気や症状にはさまざまな原因があり、すべてをストレスだけで説明することはできません。
ただ、ストレスが身体や心に影響を与えることは、医学的にも知られています。
だからこそ、身体に変化が現れたとき、
「自分はいま、どんな状態なんだろう?」
と立ち止まってみることには意味があると思っています。

身体は、あなたに何を伝えようとしているのか
私は、身体はとても親切なものだと思っています。
痛みや疲れ、眠れないこと、呼吸の変化。
それらを単純に「悪いもの」と決めつけるのではなく、
「何かを教えてくれているサインかもしれない」
と、一度立ち止まって身体に耳を傾けてみる。
もちろん、症状がある場合は自己判断だけで済ませず、必要に応じて医療機関に相談することも大切です。
そのうえで、
「最近、頑張りすぎていなかったかな?」
「本当は嫌だったことを我慢していなかったかな?」
「休む時間はあったかな?」
「本当は何をしたかったんだろう?」
と、自分自身に問いかけてみる。
身体を変える前に、
まず身体の声を聴いてみる。
それだけでも、自分の状態に気づくきっかけになるかもしれません。
ストレスをゼロにする必要はない
ここまでストレスについて書いてきましたが、私は「ストレスを完全になくしましょう」と伝えたいわけではありません。
生きていれば、ストレスはあります。
仕事も、人間関係も、環境の変化も、すべてを避けることはできません。
大切なのは、
ストレスがあることではなく、ストレスに気づけること。
そして、
「今の自分には少し負荷がかかっているな」
と気づいたときに、休むことができること。
予定を一つ減らす。
早く寝る。
何もせずぼーっとする。
自然の中を歩く。
誰かに話をする。
深く呼吸する。
身体をゆっくり動かす。
自分が心地よいと感じることをする。
そうやって、少しずつ自分の感覚を取り戻していく。
私がセラピストとして身体に触れてきて感じるのは、
身体は突然壊れるのではなく、その前から小さなサインを出していることが多い
ということです。
だからこそ、強制的に止まらなければならなくなる前に、自分で立ち止まってあげる。
「まだ大丈夫」ではなく、
「今の私は、本当に大丈夫?」
と自分に聞いてみる。
それは、自分の身体を大切にするということでもあります。
そして何より、
自分の身体の声を聴けるようになることは、自分の人生を自分で選び直していくことにもつながるのだと思います。
今日、ほんの少しだけでもいいので、
肩の力を抜いて、
呼吸を感じて、
身体の声に耳を澄ませてみてください。
あなたの身体は、今、何を伝えていますか?




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