
インドの中でもアーユルヴェーダ文化が深く根づくケララの病院で、パンチャカルマを受けた時の話です。
サンスクリット語でパンチャ(数字の5)+カルマ(行い)、つまり「5つの行い」と書いてパンチャカルマと読みます。
アーユルヴェーダとパンチャカルマに興味を持った理由は、ヨガでした。
もともと私は、インドのヨガの聖地と言われるリシケシという地域でヨガ哲学を学ぶために旅をしました。
そこで、カルマヨガというヨガにおける考え方や身体の浄化法についていろいろ学ぶ機会をいただき、それがきっかけで、アーユルヴェーダというインドの古典医学にも身体を浄化するパンチャカルマがあることを知りました。
ケララのアーユルヴェーダ病院
私が3週間過ごしたアーユルヴェーダの病院
私が行ったところは、ケララの首都トリヴァンドラムから北へ車で3〜4時間走ったところにある、かなり田舎の病院です。
空港に到着したのは夜の10時ごろで、病院に着いたのは朝の2時ごろでした。
病院をまとめているドクターAの右腕のSさんが待っていました。
荷物を下ろしたらすぐに部屋へ案内してくれて、私は長時間の旅で疲労が溜まっていたせいか、ベッドに横になって、気づいたら寝ていました。
この病院は観光客向けに作られたアーユルヴェーダ施設とは違い、現地の人も通うような一般的なアーユルヴェーダ病院でした。
僕が滞在していた3週間は、インドのカルナータカ州から来ていた家族がいたり、イタリアから来ている姉妹がいたり、日本人女性も一人いました。
朝の4〜5時ごろには近くで飼われているオスドリが鳴き、近くのヒンドゥー寺院から爆音の音楽が流れてきて目が覚めました。
もうこの時間には空が明るくなっていました。
もう少し仮眠をとってから、病院を探索しました。
小さな病院で8部屋ほどあり、最上階はヨガができるような広い空間になっていました。
そして、離れにキッチンがあり、患者さんの食事がそこで用意されます。
パンチャカルマを受けるには、最低限3週間入院する必要がありました。
6週間が理想だと言われていましたが、3週間で退院してからも、先生に処方されたオイルでマッサージをしたり、薬を飲んだりしながら3週間過ごさないといけません。
この場所はとても居心地がよく、まるでジャングルの中にいるような気分でした。
五感がものすごく刺激されるこの新鮮な感覚は本当に楽しく、最初は来て良かったと思いました。
この時、僕はこれから経験する悪夢をまだ全然知りませんでした。
パンチャカルマが始まる(まずはスネーハパーナ)

パンチャカルマの記録
到着した1日目は、ドクターAによる診察でした。
といっても少し話した程度でしたが、「明日から始めよう」とのことでした。
次の日(2日目)から、スネーハパーナ(ギーの服用)を朝から始めました。
ギーは料理と一緒に食べると本当に美味しいですが、そのまま飲むと本当に違和感があって気持ち悪かったです。
その後にライムで口直しがあるので、それは本当にありがたかったです。
2日目はギーを朝に飲んで、午後は発汗させるスチームバスのような、木でできた機械の中に入って、薬草の香りの湯気で温まりながら汗をかきました。
そして、アビヤンガという、温めたオイルを全身にたっぷりと塗り、身体を包み込むように行うアーユルヴェーダの伝統的な施術を受けました。

ただ、日に日にしんどくなりました。
というのも、ギーの量が毎日増えていくからです。
最初は30ml → 60ml → 120ml → 180mlという形で、どんどん増えていきます。



立っているだけで気持ち悪くなるので、横になるしかない。
でも、横になっても気持ち悪い。
本を読んだり、スマホを見たりしようとするけれど、集中もできない。
ずっと部屋でだら〜っとしている状態です。
6日目から8日目は本当に大変でした。
朝、ギーが入ったアルミコップを渡されるのですが、もう香りを嗅いだだけで、うっと気持ち悪くなりました。
そして、飲み込む時が本当に最悪です。
できたら捨てたいけれど、しっかり右腕のSさんが見張っているので、全部飲むしかありませんでした。
私にとっては、外へ行けず、部屋の中でダラダラ横になって過ごすということが、とにかく耐え難かったです。
ギーを飲んでいる間、食べていたもの


この期間、食事はとてもシンプルで、ココナッツと穀物を砕いたものを蒸したものと、豆料理だけ。
おそらく、お腹に負担をかけないようにこのような食事制限があったのだと思います。



食事を制限されることが、ここまで苦になるとは正直思いませんでした。
食事にいろんな種類があるありがたみはこの期間、とても感じました。
最悪と最高の日(ヴァマナ)
ギーを飲むのを卒業した朝。
すぐに治療部屋へ案内されました。
そこにはドクターAがいました。
この日はヴァマナをすると言われました。
この「十分に飲み」という言葉には語弊があります。
十分を超えた領域ですね。
私の場合、まずは250mlの生ぬるい塩の入った牛乳を渡され、どんどん飲めと言われました。
できるだけ早く飲んでほしいとのことで、「ごくごく」と、しょっぱいと思いながら飲み干し、空のアルミコップをJさん(アビヤンガ担当者)に渡しました。
そしたら彼は、そこに牛乳を満杯に入れて、「飲んで」と言いました。
また?
と思いながら、ごくごくと飲み干しました。
彼はまたコップを満杯にして、「飲んで」と言いました。
ごくごくと飲み干してから、また空のコップを彼に渡しました。
再びしょっぱくて生ぬるい牛乳で満杯にしてから、「飲んで」と言われて渡されました。
この時、私はすでに750mlの牛乳で、お腹がかなりいっぱいでした。
あとどれくらい飲まされるの?
と不安に思い始めて確認したら、2Lくらいと言われてびっくりしました
でも、飲まないとこの浄化法が完成しないので仕方なく、頑張って渡されたコップを飲み干そうとしましたが、身体が「飲みたくない」という合図を出してきました。
ゆっくりでしたが、なんとか1Lがお腹におさまりました。
その後、さらに500ml(コップ2杯)を飲み干しました。
どこかへ行っていたドクターAがやってきて、薬草液が入ったコップを私に差し出し、「これを飲んで」と言われました。
身体の拒否反応を押し殺しながら、なんとか飲み干しました。
まだ牛乳を2杯飲まないといけなかったのですが、もうさすがに飲めそうにないという反応を身体が出していました。
少し気持ち悪くなり、
「吐きそう」
とJさんに伝えました。
彼は赤くて大きいプラスチックのバケツを目の前に置き、「ここに全部吐いていいよ」と伝えてくれました。
お腹に溜まっていた牛乳と薬草液が混ざったものが少し出ましたが、嘔吐まではいきませんでした。
このままだとさすがにまずいと思い、舌の奥を指で押さえ、わざと嘔吐を促しました。
嘔吐の勢いは凄まじく、まるで庭のジェットホースから出る水の勢いのように、牛乳と薬草液が混ざった液体がドバーっとバケツに叩きつけられました。
その後、石鹸を渡されて隣のシャワー室に案内されました。
シャワーをしている間から、感じていたことがあります。
それはもう、とんでもないスッキリ感。
今まで、こんなにスッキリした日を味わったことがあるのかというくらい、スッキリしていました。
まるで天国を一瞬味わっているかのような気分でした。
シャワーから出たその後の1日は、視界がとても広く、とにかく気持ち良かったです。
私にとって、この日は最悪の日でもあり、最高の日となりました。
念願のチャイ






何より嬉しかったのは、その日から1日1杯はチャイが飲めるようになったこと。
そして、フルーツも食べられるようになったこと。



ヴィレーチャナ(薬草で排便)
ヴァマナを終えた次の日は、ヴィレーチャナをしました。
これを飲んだのがお昼頃でしたが、それから多分4〜5回くらいはずっとトイレに行きっぱなしで、部屋に監禁されているような状態でした。
「昨日は口からたくさん出し、今日は尻からたくさん出して、忙しいな」と思いながら、その日が終わりました。
それからは、数日休む日がありました。
アビヤンガは毎日欠かさずありましたが、それ以外の時間帯は少し病院周りを探索したり、近くのヒンドゥー寺院を訪れたりしました。
バスティ(ギーと薬草液の注腸)
最後にした治療はバスティ。
ギーやオイルは、乾燥した身体に潤いを与えるような役割として使われています。
まず、ギーの注腸をしました。
約50ml〜80mlくらいだったと思います。
かなり大きい注射器にギーが入っていて、裸になってうつ伏せになってくださいと言われます。
そして、気づいたらお尻に何かが入り込み、肛門あたりや大腸あたりに変な感じがします。
「もう終わりだよ〜。部屋に戻ってから出していいよ」と言われ、確かに排便したい感覚がありました。
服を着て部屋に戻ると、ちょうどトイレに行きたくなりました。
そして便座に座り、いつものように排便しようとしたら、何かとても熱い液体がジュッとすごい勢いで出ていきました。
水面にはギーが浮かんでいて、「こんなにたくさん入れられたんだ」とびっくりしました。
2日後にもう一度、ギーの注腸をしました。
この時も前と似た感じでした。
そして2日後に、ビッグイベントが待っていました。


そのビッグイベントとは、薬草の煎じ液を注腸すること。
ただ、量は今までとは比べ物にならないくらい違いました。
どう違うかというと、施術台にドクターAが何かを持ってやってきたのですが、それを見た時は「ひえっ!」と心の中で叫びました。


彼が持っていた注射器はロケットランチャー並みに大きくて、「500ml注入するよ」と言われた時に、「そんなの無理だ!」と心の中で叫んでいました。



息を飲み込んでズボンとパンツを脱ぎ、うつ伏せになりました。
そして、ドクターAが持っていたそのでかい注射器が視線から消えてから、大腸が圧迫されるような違和感を感じ始めました。
「早く終わってくれ!早く!」と思いながら、ずっとその違和感に耐えていました。
30秒ほど耐えてから、ドクターAが去るところを目の端で一瞬見ました。
そして、施術をいつもしてくれているJさんが、「終わったよ。数分だけ待ってから、ここのトイレを使ってね」と言いました。
確かに、お尻を少しでも緩めたら全部出てきそうな感覚でした。
水や流れるイメージを考えないようにして、押さえていました。
数分経って、すぐにトイレに行き、そこで今まで溜まっていた薬草液がジェットのようにズパッと出ました。
ハーブボールとアビヤンガの日々
バスティを終えてからは、アビヤンガとハーブボールの日々。


ハーブボールは、近くにある薬草をドクターAが収穫し、それを切り刻んでから炒めて、最後は布で包んで施術に使います。
施術中に熱した油につけながら身体をマッサージしていくので、かなり熱い時もあります。



香りはとてもよく、しばらくすると熱さにも慣れて、もう少しリラックスできます。
また、日によっては、このハーブボールの中に薬草の煎じ液や牛乳で炊いた特別なお米を布で包み込む、ナヴァラキリという施術を受けました。
これは、お粥がドロドロ身体に塗られている感覚で、とても新鮮でした。
温めたナヴァラ米で身体を包み込むように施術し、肌に潤いを与えながら身体を温める、アーユルヴェーダの滋養・若返り療法のひとつだと聞きました。
シロダーラという温めたオイルや薬草液などを、額の中央あたりに一定のリズムで細く垂らし続けるアーユルヴェーダの伝統的な施術も受けました。



また、僕が受けたアビヤンガのオイルマッサージは優しい圧力でしたが、人の性質によって、または凝りがあるかないかによって、かなり強くする場合もあります。
滞在している時に来ていたイタリア人姉妹は、「アビヤンガが痛すぎて嫌になった」とおっしゃっていました。実際にあざになっていた箇所を見てびっくりしました。
また、アビヤンガはセサミオイルを使用していたこともあり、人によってはその香りがかなり強いと感じることもあります。
僕は大丈夫でしたが、ギーを飲んでいる日は、なぜかその香りを嗅ぐとすごく気持ち悪くなり、アビヤンガを受けるのに抵抗がありました。


パンチャカルマを受けた感想と、なぜ鬱になったのか
では、感想をお伝えします。
健康な方は、パンチャカルマを受ける必要はないと思います!
これはあくまで個人的な意見です。
私は興味津々で受けてみたのですが、最後は鬱っぽくなっていました。
理由としては、身体を洗浄するということは心にも何らかの影響があると感じ、心が健全でも、一時的に感情の波を味わうことがあるように私は感じました。
また、病院にずっといないといけないというのは、私にとっては監獄のように感じ、自由がないのがとにかく精神的にきつかったです。
それだけでなく、食事も制限されること、食べたいものを好きな時間に食べられないことは、とにかくストレスでした。
ですから、調子が悪く、体調を良くしに行こうという、はっきりした意図や目的があったほうがやりやすいと思います。


パンチャカルマをお考えの方に、何か参考になれば嬉しいです。
もし何か不安があったり、知りたいことがあれば、Zoomなどのカウンセリングという形でお話しさせていただきます。



より深い話などを聞いてみたい方は、お気軽にご相談ください。


コメント
コメント一覧 (2件)
私も2年前にケララで3週間アーユルヴェーダを受けました。帰りにはアマのアシュラムにも寄ってきました。
私も、好奇心から体験したかったのが理由ですが、心身に問題無いとの診断で、一応色々体験した感じでしたが、ユウさんの体験記を読んで、症状故にきつい治療を受けていた人を思いだし、こっちまで気持ち悪くなりました。
コメントありがとうございます☺️
同じケララで3週間アーユルヴェーダを受けられていたんですね。しかもアマのアシュラムにも行かれたとのことで、すごく興味深いです。
好奇心から体験してみたかった、というところも僕と近いですね。
パンチャカルマは人によって内容もかなり違いますし、実際に症状がある方が受けている治療を見ると、かなりきつそうに感じるものもありました。
記事を読んで当時のことを思い出していただけたのも嬉しいです。貴重な体験を教えてくださり、ありがとうございます☺️